クッキー








「あげるわ」

「は?」



いきなり何だと思い、後ろを振り向けばハーマイオニー・グレンジャーが居た。何故にもこんないきなりしかも廊下で僕なんかに話しかけてくるのかと考えを巡らせてみたが何も思いつかなかった。



「だから、あげるって言ってるのよ」



ああ、そういえばあげるとか言ってたな、などと呑気に思っていたらグレンジャーは僕の手に何かを握らせてきた。



「…」



そして僕がそれを見ている隙に彼女は去って行こうとする。慌てて腕を引っ張り引き止めてこれは一体何の真似なんだ!と問い詰める事にした。



「おい、これは何だよ」

「分からないの?クッキーに決まってるでしょ」

「それは分かるが…」



見ればそのくらい僕だって分かる。

分からないのはどうして彼女が僕にクッキーなんかくれたのかって事だ。



「余ったのよ、それ。ジニーと一緒に作ったんだけど」

「だったらポッターとかにあげればいいだろ」



確かにそうだと思う。何で僕なんだろう。僕なんて親しくないし、むしろ親しくしたくない相手のはずなのに。

するとグレンジャーは顔を赤くして微かに傷ついたような表情をした。



…何でだ?





「たまたまあなたが前を歩いていたからあなたにあげたの。いいから受け取ってよ」

「受け取れって言われても……あ、待てよ!」



また僕が戸惑っているうちにグレンジャーが去って行こうとした。

だけど今度は彼女を引き止める事が出来なかった。声はかけたがさっきみたいに腕を引っ張る事は出来なくてただ去っていく彼女の後ろ姿を見つめた。









「何だよ、このクッキー…」



残ったのは手の中にあるクッキーが1つ。



しばらくそれを見つめていたが持ってても仕方がないので食べる事にした。普通なら毒が入ってるかもしれない(何せくれたのはグレンジャーだ)のですぐさま捨てるところだ。だけど妙に捨てられない。



「……」



案外、美味いじゃないか。

グレンジャーが去って行った方向を見ながらぼんやりとそんな事を思った。












※題名そのまんまじゃないか(だって思いつかなかったんです/言い訳)